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東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)17号 判決

原告

ヘミーフアク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング

被告

特許庁長官

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告のための附加期間を90日と定める。

事実

第1当事者の求めた裁判

1  原告

「特許庁が昭和50年6月30日、同庁昭和47年審判第3657号事件についてした審決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

2  被告

主文第1、2項同旨の判決

第2当事者の主張

1  請求の原因

(1)  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和43年8月6日特許庁に対し、名称を「遅れ弾性を有する予圧縮された発泡プラスチツク体」とする発明につき、1967年(昭和42年)8月7日及び同年11月11日ドイツ国にした特許出願にもとづく優先権を主張して、特許出願をしたところ、昭和47年3月15日拒絶査定を受けた。そこで、原告は、特許庁に対し審判を請求したところ、昭和47年審判第3657号事件として審理されたが、昭和50年6月30日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は同年10月18日原告に送達された。なお、出訴期間として3カ月が附加された。

(2)  本願発明の要旨

1 圧力下で圧縮され得て、その圧力を除去した後、ある時間この状態に保たれる、ビチユーメン又は類似の接着手段で浸せきされた継目を密封するための弾性発泡プラスチツク体において、それが封入後に真空にされる気密な封包物内に予圧縮された状態で封入されることを特徴とする発泡プラスチツク体。

2 圧力下で圧縮され得て、その圧力を除去した後ある時間この状態に保たれる、ビチユーメン又は類似の接着手段で浸せきされた継目を密封するための弾性発泡プラスチツク体において、それが真空にできる封包物内に封入することにより直接所定の処理を受ける時点までこの圧縮状態に保たれ、また、前記の浸せきされた弾性発泡プラスチツク体が、圧縮にさいし空隙内に残される残留空気の大部分が逃げるまでの程度に真空にされることを特徴とする発泡プラスチツク体。

(3)  審決理由の要旨

1 本願発明の要旨は、前項のとおりである。

2 ところが、本願発明の出願前国内に頒布された特公昭39-21380号公報(以下「第1引用例」という。)には、小容積に容易に圧縮することができ、しかもその圧縮力を取り去る場合は常に元の容積および形状に復元する、合わせ目または接ぎ目等の填隙材料または接続材料として特に好適なポリウレタンフオームのアスフアルト含浸品が、同じく本願発明の出願前国内に頒布された特公昭42-7353号(以下「第2引用例」という。)には、圧縮力が取り除かれたとき材料が元の全容量に回復する多孔性プラスチツク材料を真空包装する方法が、それぞれ記載されている。

そこで、まず本願発明の要旨第1番目の発明(以下「本願第1発明」という。)と第1引用例の記載とを比較すると、両者は圧力下で圧縮され得て、その圧力を除去した後、ある時間この状態に保たれる、ビチューメンまたは類似の接着手段で浸せきされた継目を密封するための弾性発泡プラスチツク体であることで同一であり、前者はそれが封入後に真空される気密な封包物内に予圧縮された状態で封入されると規定されているのに対して、後者にはそのような規定がない点で相違がある。

しかしながら、第1引用例のビチユーメン含浸発泡プラスチツクは圧縮して小容積になつた状態で使用されるのであるから、これをあらかじめ圧縮した状態にしておくことは当業者が実施に際し当然考えることであり、その際圧縮した状態に保持するために第2引用例の真空包装手段を採用することは、本願第1発明の含浸発泡と第2引用例の材料とは圧力解放後の復元速度に多少の差があつても、ともに元の状態に復元する弾力性多孔体であり、それが圧縮状態に保持されることでは同一であるから、このことに格別創意工夫を要したことは認められない。

ついで、本願発明の要旨第2番目の発明(以下「本願第2発明」という。)と第1引用例の記載とを比較すると、前記本願第1発明との相違点のほかに、前者には圧縮にさいし空隙内に残された残留空気の大部分が逃げるまでの程度に真空にされるという規定があるのに対し、後者にはそのような規定がない点で相違がある。

しかしながら、前記空隙内の残留空気の大部分が逃げるまでとはその明細書の記載から強く圧縮されているという意味と解され、第1引用例には、圧縮の程度によつて含浸品の復元時間がかわること、必要に応じ圧縮の程度を調節することが記載されているのであるから、前記のごとく規定することに格別の意義は認められない。

したがつて、本願第1および第2の各発明は第1引用例および第2引用例の記載から当業者が容易に発明することができたものと認められる。

(4)  審決を取り消すべき事由

本願各発明の要旨、第1引用例の記載内容、本願各発明の構成と第1引用例所載のものとの一致点と相違点、第2引用例の記載内容はいずれも審決認定のとおりであることは認めるが、審決は本願各発明が次のような顕著な効果を奏することを看過し、その結果本願各発明の進歩性を否定しているから取り消されるべきである。

1(1) 本願各発明にかかる発泡プラスチツク体は、その復元時間の長さの点で格別のものがある。

本願発明のもののように、ビチユーメン含浸発泡体を圧縮して小容積にする手段として真空法を用いた場合、発泡体の空隙内の空気が逃げることによつて発泡体が圧縮されるのであるから、圧縮手段が排されて再び元の膨張状態に復元されるためには再び外部から発泡体の空隙内に空気が入り込まなければならない。他方、第1引用例のような物理的圧縮処理によりビチユーメン含浸発泡体を小容積にする場合には、発泡体の空隙内の少なくとも一部分の空気が残存圧縮されたまま発泡体が圧縮されるのであるから、圧縮手段が排されて再び元の膨張状態に復元される際に発泡体空隙内の圧縮残存空気が発泡体の膨張に影響することは明らかである。

上記二つの場合の膨張復元の時間を比較してみると、真空法による場合は空気が逃げた後の発泡体の空隙内の気圧は発泡体外部の気圧より低いが、物理的圧縮処理の場合は空隙内に残された空気が加圧されているから、発泡体外部の気圧より高い。したがつて、気圧の低い空隙内に外部から空気が入りこんで発泡体を膨張させる真空法の方が、気圧の高い空隙内で圧縮された空気が膨張することによつて発泡体を膨張させる物理的圧縮法よりその膨張に多くの時間を要することは論を俟たないところである。

事実、本願各発明にかかる発泡プラスチツク体の復元時間は1時間またはそれ以上であるのに対し、第1引用例のような使用時におれる物理的圧縮によるものの復元時間は33分であるから、本願各発明のものは、現場における充顛作業に際し、より小容量のものをゆつくり使用でき、復元時間の点で著しくすぐれており、顕著な効果を奏するといえる。

なお、甲第8号証には、「……この真空化による効果として、真空化の程度によつて圧縮された発泡体の孔からその内部の空気がほとんどまたは僅な量だけ除去することができるので、その発泡体の需要次第で真空度を高めそして封包物を除去した後に元の膨張した開放状態に再びもどるまでに1時間または更に長時間の間圧縮状態を保持せしめることも挙げられます。」との記載があるが、これは本願第2発明に限定して述べられているわけではない。上記記載中の「真空度を高め」という文言も前後の文脈の中で読みとらるべきであり、前記記載は、「真空化の程度によつて圧縮された発泡体の孔からその内部の空気がほとんどまたは僅かな量だけ任意に除去することができるので、その発泡体の需要次第で真空度を高めることができるのだから、真空度の程度によつて圧縮状態保持の時間が1時間にもなり、または更に長時間にもなる」という趣旨と解さるべきである。

上記のことをいいかえると、本願発明は空気の除去量が僅かな場合(すなわち真空度の低い、本願第1発明の場合)からほとんど空気が除去される場合(すなわち高度に真空化された本願第2発明の場合)まで、発泡体の需要次第で真空度の程度を定めることができ、真空化の程度により最低1時間からそれより長時間の間まで圧縮状態を保持することができるのである。したがつて、本願第1発明においても最低1時間は圧縮状態を保持することができる。

また、甲第10号証によれば、実験結果では、(イ)袋に入れてなくかつ減圧していない、ビーム形プレスで圧縮した圧縮発泡体帯状物(これをaとする)の復元時間は24時間以上、(ロ)含浸発泡体帯状物をビーム形圧縮機で圧縮し、袋に入れ、そして150トール(mmHg)に減圧したもの(これをbとする)の復元時間は48時間以上、(ハ)含浸発泡体帯状物をビーム形圧縮機で圧縮し、これを袋に入れそして90トール(mmHg)に減圧したもの(これをcとする)の復元時間は14日以上であるが、上記のうち、bは本願第1発明に、cは本願第2発明に、それぞれ対応するから、上記の実験結果は本願各発明の復元時間の点における効果が顕著なものであることを裏付けている。

(2) 本願発明は、ビチユーメンを真空包装することによつてこれを空気に触れさせることを避け、ビチユーメンを空気中におくと時間の経過によつてビチユーメンの粘着度が低下して復元速度も速くなるという従前のビチユーメン含浸発泡プラスチツクの欠点を克服したものであり、この点でも顕著な効果を奏するというべきである。

2 本願各発明にかかる発泡プラスチツク体は、従来のものにない次の利点を有するが、これもまた本願各発明の奏する顕著な効果である。

(1) ビチユーメンという物質を含浸した発泡体を施工現場で圧縮したりすればビチユーメンがあちこちに付着して器物等を汚染するが、本願発明は真空状態で圧縮されているから、施工に際して圧縮処理を全く必要とせず、器物を汚染することはない。

(2) 本願発明のものは作業現場において真空包装を破り取れば直ちに使用でき、その余の一切の操作が不要であるから、真空包装を破りとる場所さえあれば充分であり、作業現場での作業面積は極めて少なくてすむ。

(3) ビチユーメンを構成する物質のうち、柔かい低分子量の炭化水素物質の最も低分子量の領域のものは、空気中に揮発してしまう傾向があるから、前記のように時間の経過とともにビチユーメンが変質し粘着度が低下してしまうが、本願発明のものは真空包装をすることによつて空気との接触を絶つから、上記のような変質がなく、長期の保存に適する。

(4) 本願発明のものは、真空包装がしてあるので、運搬、集積等が手軽にでき、しかも真空処理によつ非常に密な状態で密封包装されているため包装内の発泡体に動きがなく、簡単に形崩れしない。

2 被告の答弁と主張

(1) 請求の原因(1)ないし(3)の事実は認める。

(2) 請求の原因(4)について

原告の審判請求が成り立たないことは審決理由に示すとおりであり、審決には何ら誤りはない。

1 について

(1)ⅰ そもそも、本願各発明はその用途、使用態様を限定していないから、1使用態様における利点が他の使用態様において利点になるとは限らず、かりに復元時間が長いとしても、そのことが本願発明の作用効果の顕著性の根拠とはなりえない。

ⅱ しかも、次に述べるとおり本願第1発明には真空度の低い、すなわち圧縮度の低いものが含まれているから、その真空度は極めて低い場合からかなりの程度のものまであり、復元時間が1時間以内の場合がないとはいえない。すなわち、本願第2発明には、本願第1発明にさらに「圧縮にさいし空隙内に残される残留空気の大部分が逃げるまでの程度に真空にされる」という条件が付加されているが、このことは本願第2発明は高度に真空にされた状態で封入された発泡プラスチツク体であるのに対し、本願第1発明は真空度の低い状態で封入された発泡プラスチツク体を包含していることを意味するのである。

ⅲ また、本願発明の復元時間は、本願明細書中の記載からみて、第2発明の場合でさえコンクリート打ちする前に差し込まれたものがコンクリートが発泡プラスチツク体の復帰力を受けることができる程度に固まつてから復元する程度すなわち数時間程度と解されるところ、第1引用例には復元時間100分の例が記載されているから、これとさしたる差がなく、かりにそういえないとしても当業者が予測しうる程度のものであるから、顕著なものとはいえない。

(2) につき

この利点は、本願の優先権主張日前に公知のものであるビチユーメンまたはこれと同様のもので浸せきされた発泡体帯状物の包装品やそれを圧縮した状態で封包物で保持したものでも持つ利点であつて、本願各発明の真空包装品に特有の利点ではない。

2 について

(1)の点は、本願各発明のものも、施工に際して圧縮するのではないだけで、必ず圧縮処理を受けているのであるから、圧縮処理における器物の汚染という点では第1引用例のものと格別の相違はない。

(2)の点は、本願発明のものも施工に際してではなくとも必ず圧縮という作業は必要なのであるから、作業面積についても第1引用例のものと格別相違はない。

(3)、(4)の点についても、第1引用例には製品は貯蔵中寸法変化をする欠点を克服したもので、かつ完全に復元するものである旨記載されており、貯蔵中に寸法変化がないという性質は貯蔵性が良く形崩れがないことを、完全に復元するという性質は形崩れがないことを示していると解されるから、長期保存に適するとか、形崩れしないという点では第1引用例のものと格別相違がなく、また製品が嵩張らないから取扱いが簡単だという意味では第2引用例の多孔性で圧縮できる材料の真空包装体と格別相違がない。

理由

1  請求の原因(1)ないし(3)の事実は当事者間に争いがない。

2  そこで、審決を取り消すべき事由の有無について検討する。

(1)  本願各発明の要旨、第1引用例の記載内容、本願各発明と第1引用例記載のものとの一致点と相違点、第2引用例の記載内容が審決認定のとおりであることは当事者間に争いがなく、これによれば、本願各発明は、当業者にとり予測できない顕著な効果を奏すると認められない限り、当業者が第1および第2引用例の記載から容易に発明できたとする審決の判断を正当として是認すべきものと考える。

(2)  そこで、本願各発明は、原告の主張するように顕著な効果を奏するといえるかどうかについて検討する。

1(1) 被告は、本願発明の用途は限定されていないから本願発明において復元時間の長さは効果の顕著性の根拠となりえないと主張するが、成立に争いのない甲第2号証の2(本願明細書)によれば、本願発明は主としてビル建築における継目または空所を密封するため、あるいは地下工事における密閉フランジを密封するために用いられることを予想していることが認められるところ、上記のような用途に用いられる場合、復元時間の長いことにも意義があることは見易い道理であるから、復元時間の長さを本願各発明の効果の顕著性の有無の検討の対象とすべきことは明らかである。

ところで、成立に争いのない甲第2号証の2(本願明細書)によれば、本願明細書中の発明の詳細な説明の項には、「本発明は、発泡プラスチツクが圧縮された後この状態に一定時間保たれ、数分またはそれよりも長い時間が経過した後始めてそれに内蔵される弾性力によつて再び最初の膨張状態をとるようにビチユーメンまたは他の媒質によつて浸せきされた主としてストリツプ状のそれ自体公知の発泡プラスチツク体に関するものである。……」(と記載されていることが認められ、これによれば、本願発明にかかる発泡プラスチツク体の復元時間は、「数分またはそれよりも長い時間」である。

ところが、前記のように当事者間に争いがない本願各発明の要旨によれば、本願第2発明には「圧縮にさいし空隙内に残される残留空気の大部分が逃げるまでの程度に真空にされる」ということが発明の要旨の構成部分をなしているのに本願第1発明ではそうでないから、本願第1発明は本願第2発明に比し圧縮度が低く真空度の低いものを含むと解され、それ故本願第1発明の復元時間には前記明細書記載の復元時間の下限である数分が包含されることになる。

これに対し、成立に争いのない甲第3号証(第1引用例)によれば、第1引用例記載のポリウレタンのアスフアルト含浸製品でも復元時間30分以上という効果を奏するものが認められる(第5頁第4図と第3頁下記欄の説明参照)。

そうすると、本願第2発明が復元時間の点で顕著な効果を奏しうるといえるかどうかはしばらくおき、少なくとも本願第1発明の奏しうる復元時間は決して顕著とはいえないものを包含するといわざるをえない。

もつとも、成立に争いのない甲第8号証(審判請求理由補充書)によれば、原告代理人作成名義の特許庁審判長あての「審判請求理由補充書」と題する書面には、「……その発泡体の需要次第で真空度を高めそして封包物を除去した後に元の膨張した開放状態に再びもどるまでに1時間または更に長時間の間圧縮状態を保持せしめる……」との記載があることが認められるけれども、「真空度を高め」ない本願第1発明の復元時間は明載書記載の復元時間の下限を含むという前記の判断を左右するものではない。

また、成立に争いのない甲第10号証によれば、原告会社の技術者ヨアヒム・ミユツエルフエルトが指導して行なつた実験結果は原告主張のようなものであることが認められ、そのうち原告のいうbは本願第1発明に、cは本願第2発明に相応すると考えられるけれども、復元時間は、減圧度の相違のみならず、原材料である発泡体樹脂の相違、ビチユーメンの性質ならびに含浸量の相違、貯蔵時間の相違等によつて左右されることを否定できない(このことは弁論の全趣旨により明らかである)から、上記実験結果によつても、本願第1発明の復元時間が明細書記載の復元時間の下限である数分を含まないとはいえない。

(2) また、粘着度低下がなく、復元時間も一定しているという点については、前記甲第2号証の2(本願明細書)中に何らの記載もないのみならず、このような効果を奏するとしても、第1引用例記載のビチユーメン含浸発泡プラスチツクを小容積にして第2引用例記載の真空包装をすれば得られることが当然予測される効果であつて、顕著な効果ということはできない。

2(1) 請求の原因(4)2(1)において原告が主張する効果は、施工時に限つていえば原告主張のとおりであるとしても、本願各発明のものも圧縮処理を必要とすることは明らかであり圧縮作業の場を施工現場から他に移したに過ぎないのみならず、当業者の当然予測しうる効果であるから、原告主張の効果を顕著な効果とはいい難い。

(2) 請求の原因(4)2(2)において原告が主張する効果も、当業者の当然予測しうる効果である。

(3)  請求の原因(4)2(3)において原告が主張する効果は、前記甲第8号証と弁論の全趣旨により、本願の優先権主張日前にすでに公知のものであると認められるビチユーメンまたはこれと同様なもので浸せきされた発泡体帯状物の包装品や上記の発泡体帯状物を圧縮した状態で封包物で保存したものがもつ利点であつて本願各発明の真空包装品に特有の利点ではないことが明らかであり、顕著な効果とはいえない。

(4)  さらに、請求の原因(4)2(4)において原告が主張する効果も、成立に争いのない甲第4号証、(第2引用例)には、「記記」材料は機械的な圧縮を受けるので孔中に含まれた空気は容易に追放されるので高度の圧縮によつて包装後、材料の一定量が、つめこまれるので非常に小さな空間を占める。圧縮された材料は緩かい材料より非常に大きな抵抗を与えるので包囲した箔は緩かい材料をかこむ袋のように容易には破損しない。したがつて本発明の包装体は公知の包装体より堅固である。」と記載されているから、すでに公知の効果であり、顕著な効果とはいえない。

したがつて、少なくとも本願第1発明には顕著な効果があるとはいえないから、結局、その進歩性を否定した審決の判断は正当と認められる。

(3)  そうすると、本願第1発明と併合出願され、これといわば一蓮托生の関係にある本願第2発明が、復元時間の点で顕著な効果を奏するかどうかの点について判断するまでもなく、本願についての審判請求を成り立たないとした審決に誤りはないことになる。

3  よつて、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を、上告のための附加期間について同法第158条第2項を適用して主文のとおり判決する。

(小堀勇 小笠原昭夫)

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